最低居住面積水準

「1989年に施行された創設時の知的障がい者グループホームの入居者数は4~5人が標準とされ、最大でも7人定員であった。これが「障害者総合支援法」(06年)において10人以下に拡大され、さらにただし書きの中で、20人(都道府県知事が特に必要と認めるときは30人)以下という緩和規定まで付記された。当初から懸念されていたミニ施設化が成文化されたわけである。」( 鈴木 2016:101)

出どころはわからないが、定員数が5人を超えるグループホームの割合が急増しているデータが掲載されている。制度で認められたのだから増えるのは当然だとしても、集団ケアを行う施設の新設を認めないとしながら、他方でグループホームの定員数を増やしていくことは明らかに矛盾している。

住宅性能・居住環境・居住面積についての水準向上を目指す住生活基本計画だが、

「当事者の望む住生活環境で暮らすということ、安全性はもちろん、「健康で文化的な住生活の基礎として必要不可欠」と規定される最低居住水準(すべての世帯の達成をめざすとされている)は単身の場合20㎡、「豊かな住生活の実現を前提」とした誘導居住水準は単身で40㎡(都市居住型)とされているのに対して、グループホームにおける居室の設置基準は制度の創設当初と同様に7.43㎡(約4畳半)のままである。ここでもまだ、グループホームは「住まい」とは見られていない。」( 鈴木 2016:102)

国土交通省のホームページから住生活基本計画(平成28年)がダウンロードできるが、その別紙4に最低居住水準面積が示されている。その面積(住戸専用面積・壁芯)は単身者の場合25㎡とある。平成18年策定当初から25㎡であるから、上の20㎡は誤りだと思われる。だが、重要な指摘である。

「もちろん居住面積水準だけではなく、住宅設備水準についても同様で、個別のトイレ・洗面や、まして台所などは求められておらず、わが国においてこれが装備されているのはごく一部のみである。ADL(日常生活動作)の低下した場合でも、家族や知人を(面会室などではなく)自宅に迎え、飲食などを共にすることは普通の生活であり、一成人としてこのような社会的関係性を維持しながら暮らせるためには、少なくとも必要不可欠の住居水準が目標であろう。」( 鈴木 2016:102)

たしかに最低居住面積水準において緩和は認められており、共用化された機能・設備(キッチン、浴室など)に相当する面積を減じてよいとする内容である。ただし、個室には専用のミニキッチン、トイレ及び洗面が確保されることを前提としている。

 

(参考)

住生活基本計画の最低居住面積水準・誘導居住面積基準について、次の場合は記載の面積によらないとされる。①単身の学生、単身赴任者などであって比較的短期間の居住を前提とした面積が確保されている場合、②適切な規模の教養の台所及び浴室があり、各個室に専用のミニキッチン、水洗便所及び洗面所が確保され、上記の面積から共用化した機能・設備に相当する面積を減じた面積が個室部分で確保されている場合、③既存住宅を活用する場合などで、地域における住宅事情を勘案して地方公共団体が住生活基本計画等に定める面積が確保されている場合、の三つである。

 

鈴木 義弘 2016 「障がい者居住の貧困」,日本住宅会議 編『 深化する住宅の危機――住宅白書2014-2016』:99-103,ドメス出版