ユニバーサル・スペイス

「 丹下は日本の建築的伝統を「空間の無限定性」であると宣言する。西欧の建築では、部屋を用途で呼ぶ。たとえば「寝室」とか「居間」とかいう。日本では「六畳の間」とか「八畳の間」とか、広さで呼んで用途では呼ばない。また、日本の部屋は襖のような可動の壁で仕切られて、広さも一定ではなく、時と場合で自在の広さで使える。つまり、部屋=空間の機能とが、互いに限定し合わない、「空間の無限定性」とはこういう意味である。これは概念上ユニバーサル・スペイスとまったく同じものといえる。」( 黒沢 1997:33)

丹下はミース・ファン・デァ・ローエの掲げたユニバーサル・スペイスの思想を受け、日本にはすでに似た空間様式があることを発見する。ユニバーサル・スペイスは、すべての機能を満たす空間のことである。 つまり、どんな空間にもなり得る一室空間である。 丹下は彼の思想をブラッシュアップし、自邸でそれを実現する。 その自邸はまた住み続ける中で手を加えられ、結局は近代家族の典型プランLR+ΣBRに落ち着いてしまう。

黒沢 隆 1997 『個室群住居ーー崩壊する近代家族と建築的課題』,住まいの図書館出版局